第三回西沢研究室ゼミ発表
第三回西沢研究室ゼミ発表が全班終了しました。今回は各班の第三回ゼミ発表の内容を紹介します。
【河川班】
第三回発表では、まず用水・上水の利用時期と時代背景との関係性を追った。灌漑用水と生活用水が併用されて使われやすいこと、上水→用水→下水→暗渠化という流れがパターン化されていることなどがわかった。次に河川の経路を簡略図化したものを利用し水源・分岐・合流地点に着目し比較を行った。用水は源流となる場所の水量が多量かつ安定している必要があるため多摩川や荒川などからの分水がほとんどを占めるのに対し、自然河川は池や湧水が水源のほとんどを占めている。
次に河川ごとの暗渠化年代をマップ上に落とし込み経年での考察を行った。
また、過去の航空写真の比較から、1930年以前に行われた第一期と、1950〜70年代に行われた第二期という二つの暗渠化の波があることがわかった。第一期の主な転用用途である車道は、第二期の主な転用用途である緑道に比べてその特殊性が見られないことを考慮し、省くこととした。汚染や悪臭などの問題は暗渠化が終わった時点で解決しているはずであり、本来の目的は果たされていると言える。今後は、緑道や公園として用途転用し現在まで残り続けたからこそ生まれた特殊な暗渠を、開発余地や人の利用などに着目して見ていきたい。
Fig.1 研究対象河川
Fig.2 上水・用水用途変更
【地形班】
第三回ゼミでは、分析メッシュに対して「上位面領域、下位面領域」を定義し、高低差のある場所における、上面と下面という概念を可視化させました。
崖・擁壁を基準として、その上端の標高以上の領域を上位面、その下端の標高以下の領域を下位面としています。グラデーションでしか表現されなかった地形図から、上と下の領域として塗り分けた地形図へと変えて分析を進めます。(fig.1)
この領域を元に、上位面と下位面の関係性として事例を観察し、高低差のある場所の類型化のスタディを進めています。
具体的にいくつか紹介すると、
1, 建築フットプリントに関して、
・「上位面フットプリント大」型(fig2-1)
→江戸の階級に合わせた土地利用(高台に屋敷を構え、低地に細かな町人地を並べる)を踏襲したもの
・ 「上位面下位面フットプリント等しい」型
→一体が宅地となりその中に高低差が埋もれているもの
2, 建築用途(機能)に関して、
・「異なる」型
→商業施設と住宅の組み合わせなど
・「同じ」型
→マンションと戸建など、スケールは違うが住むという機能では同じ
3, 人口密度に関して、
・「上位面過密」型
・「下位面過密」型(fig2-2)
というように、上位面下位面で起きている差異がいくつか確認でき、
それらをパターン分けすることが可能であるという展望が生まれました。
この3項目のように、上下の関係性を示す指標を用いて、今後各メッシュの整理・類型化へと進みます。
Fig.3 上下領域の定義
Fig.4 上位面下位面パターンの事例
【街区班】
これまで道路幅員の構成から「街区の質」を分析し、昨年度行っていた「街区形状」との関係性を考察してきた。そこからこれら2つの指標に一定の関係性が見られた。これまで、道路幅員3m以下、3~5.5m、5.5~13m、13~19.5m、19.5m~の5種類の組み合わせを見てきた。しかし、その組み合わせは32種類あり、その多さから非常に複雑な考察が強いられることになった。
また、1種類に属する街区が少なくなり、都市のスケールで観察することが難しく、街区単体での考察に適していることがわかった。
第3回では、それら2つの理由から道路幅員の5種類を3種類にまとめて考察を行った。その結果、都市スケールの考察が可能となり、街区の分布に特徴が見られた。また、これまで道路幅員5種類で得られていた考察の一部を簡潔に言及できることとなった。
Fig.5 道路幅員5種類の構成街区
【接収班】
今回は、接収地のプロットに横浜市のものを加え、それらをベースにデータシートを作成し考察したものと、現在の米軍施設である横田基地周辺でのサーベイについて発表した。
全 体の傾向として、東京都心からの距離に比例して接収期間が長くなる。これは戦後日本の経済復興のために開発が必要な都心エリアについて日本政府が解除を強く求めたのが影響しており、逆に郊外については横田や相模原などの基地が現在まで残る結果となっている。
スケールを落としてみると、米軍によって新設される団地に比べて、改修されそのまま使われた工場などは解除のされ方に違いがあり、工場エリアの方が敷地を細かく分けて民間に払い下げられるものがいくつか存在する。一方団地では米軍家族が一度に移動するため敷地がその領域性を持ったまま国有地として学校、公営団地として再開発されるものが多い。接収時の用途によってその後現在に至るまでの再開発の傾向に差があり、それらを一度類型化してまとめる必要がある。
Fig.6 民有地払い下げの例
Fig.7 データシート
【鉄道班】
第三回発表では、各路線ごとの鉄道線形考察と曲線部が市街地に与える影響領域について研究を進めていきました。今回は鉄道線形考察についてJR8路線と私鉄7路線を対象に年代と立地からの調査を行い各路線の曲率(rad/m)と鉄道線形グラフから考察を行いました。
また、曲線部が市街地に与える影響について街区形状に着目しました。鉄道のカーブ付近には周囲の道路との関係性から残余している街区が見られた。これは、それぞれの走行車両によって交通線形が制限されていることから生み出される計画外的な場所であり、また曲線部付近には鉄道の線形にとっての支障となるものが現在まで立地していることが多く、それらに挟まれた街区は鉄道のカーブ付近だからこそおこる現象なのではないかと考えられた。
今後は、抽出された鉄道線形の曲線部について影響領域の分類を中心に追求していく。
Fig.8 抽出カーブ(カーブ長1位〜100位)
Fig.9 データシート